中学受験世帯の3割は年収600万円未満 それでも「公立を避けたい理由」の切実さ[2023.2.18 マネーポストWEB より転載]

[2023.2.18 マネーポストWEB からの転載]

中学受験世帯の3割は年収600万円未満 それでも「公立を避けたい理由」の切実さ

今年も中学受験シーズンのピークが過ぎた。首都圏の私立・国立中学校の受験者数は 8年連続で増加を続けており、2022年には5万人を超えて過去最多の水準となっている(「首都圏模試センター」の推定)などの著書があるノンフィクションライターの杉浦由美子氏によると

「地元の公立中学をどうしても避けたいという理由から中学受験をする例も多い」という。中学受験を選択する家庭の事情について、保護者へのインタビューをまじえつつ、レポートする。

 * * *

「かつてならば、全部で不合格だったから公立中学に進学し高校入試でリベンジするというケースが多くありました。ところが今は追加で受験してでも、どこかしらの私立中学に進学をします」(大手塾社員)

特に関東はその傾向が強く、そのため、中堅校の入試が難しくなっている。一昔前ならば、御三家が本命だと偏差値55以下の学校を受けないのが普通だったが、今は受験することも多々ある。

体調が不調でも必ず受かる学校をおさえたいからだ。

なぜ、そうなっているかというと、ひとつは中堅の私立中学は教育内容がよく「御三家のようなステイタスがなくても進学させる価値がある」と保護者が判断するからだ。

しかし、もっと切実な理由がある

「どうしても地元の公立中学を避けたい」と考えて、中学受験をするケースも増えているのだ。

私が中学受験をした1980年代は不良文化全盛期で、地元の公立中学の校門の前でリーゼントヘアの男子学生が煙草をふかしていた。

それを見たら「この中学では私はやっていけそうもないから中学受験をしよう」と思ったわけだ。しかし、現在の少子化でそんな不良が大きな顔をしている公立中学は滅多にないはずだ。

少子化の中、公立中学も生徒ひとりひとりに配慮をしている。

それでもわざわざ私立中学に行かせようというのは贅沢な行為だという指摘もあろうが、中学受験生の家庭のすべてに経済的な余裕があるわけではない

実際、私立中学の生徒の家庭のうち47.7%は世帯年収800万円以下で、27.9%は世帯年収600万円未満である(文部科学省「子供の学習費調査」平成30年公表)。

世帯年収600万円だと手取りが470万円ほどで、私立中学の平均的な学費70万円を支払い、住宅ローンや生活費を考えると余裕がない。

つまり、カツカツでも私立中学に子供を通わせる層がそれなりの数いるのだ。

それでもなぜ、公立中学を避けたがるのか。

今回は千葉の「公立小学校や中学の評判がいい学区」に住む40代女性・Aさんの話をもとに考察してみよう。

評判のいい学区を選んだが、実態は

Aさんの長女は今年、中学受験を終えた。進学が決まったのは都内の人気女子校だ。偏差値もそれなりに高い。

「制服がかわいいので華やかなイメージを持たれる学校ですが、実は学費が安いんです。それで受験させたんですよ。娘は女子校を希望していたので」

そう言って、Aさんは目を伏せた。希望の学校に合格したのになぜか。それもそのはずで、Aさんと夫は本来「公立志向」だった。Aさんも夫も中高一貫校の男女別学の出身である。夫は御三家出身だ。

「公立出身の人たちの方がしっかりしているというのが夫婦の共通認識なんです。女子はより周囲の人への配慮をする力が必要なはず。社会性を育てるためには公立中学がいいと思い、それで娘たちには公立中学から公立高校に行ってほしかったんです」

公立中学に進学させたいというのには、経済的な理由もある。

Aさんは2人目を産んで、長く勤めていた会社を退職し、専業主婦になった。家庭に専念するのはAさんの夢であった。夫の年収600万円でやっていくには学費は抑えたい。

夫婦で話し合い、中学受験率が低く、公立小学校や中学の評判がいい学区にマンションを買った。頭金はAさんの退職金を充てた。

ところがだ。小学校の入学直後からトラブルが起きた。

「買ったばかりの娘のカーディガンがはさみで切られたんです。1000円ぐらいの物ですが、本人が気に入っていた物だったのでショックでした」

ママ友に相談すると、いじめっ子男子グループがいて、彼らが大暴れをしていることが分かった。学年が上がると物への破壊行動はなくなっていくが、暴力はエスカレートしていき、しかも隠蔽がうまくなった。

「彼らは頭がよくて、人目のないところで、一人でいる子に対してやるんです」

小3で周囲は学習塾に通い始め…

Aさんがびっくりしたのは、女の子に対して、蹴ったり、押したりと暴力を振るうことだった。

私も取材をしていてその点に驚く。他の小学校でもいじめが過激になっていることだ。

昭和の時代、小学校で男子から女子へのセクハラや言葉のいじめはあったが、男子が女子に手を上げるようなことは、私の記憶にはない。

しかし、今は男子から女子の身体への攻撃もよく聞く。

2月7日に文部科学省が「学校で重大ないじめが起きた場合、速やかに警察に相談・通報をすること」という旨の通達を出した。文科省も無視できないほどの深刻ないじめが多くなっているということだろう。

「一度、娘もその男子たちに囲まれて、お腹を蹴られ、泣きながら帰宅したことがあったんです」

夫は激怒して、相手の家に怒鳴り込もうとした。Aさんは必死で止めた。

「暴力を振るう子の家庭もなにか問題を抱えている場合もありそうじゃないですか。トラブルに発展する可能性もあると思ったんです」

学校に電話し、相談すると担任は笑い声を出したという。

「娘さんはかわいいから男の子がちょっかいを出すんですよ」

これも非常によく聞く話だ。女子の親が男子からのいじめを相談すると、教師がそう返す。教師も激務であり、いじめの相談を受けてもすべてに完璧に対応はできないのだ。

そんな環境のせいか、小3の夏になると仲良しの女子が大手塾の講習に参加し出し、秋になるとママ友たちの話題に塾選びが出てきた。

「電車で塾に通えるのかしら」「渋幕を受けるわけじゃないなら地元の塾でもいいんじゃないの」。

そして、小3の2月には何人かの仲良しの同級生が塾に入っていき、放課後や週末、一緒に遊んでもらえなくなる。

「地元の小さな塾の塾長がトラブルの多い学年は中学受験する率が上がると話していたそうなんですが、娘の学年はまさにそれだったんです」

そうなると、Aさんも悩み始める。

「他の子がいなくなったら、いじめのターゲットが減ります。そうしたら、うちの子がさらに狙われるんじゃないかなと思ってしまって」

そう考え始めたタイミングで、娘本人も「私も中学受験をする」と言い出す。通塾している友達が「女子校に行く。男子がいないんだよ、最高じゃん!」と口にし、影響を受けたようだった。

夫も娘が蹴られたのに学校が対応してくれなかったことにショックを受け、公立志向を撤回し、中学受験に前のめりになっていく。

結局、小3の冬期講習から友達が通っている大手塾に通い出した。仲良しの同級生と電車に乗って塾に行くのは楽しいようで、娘はいきいきとし出した。

長女が受験すると妹も「私立中学に行きたい」

長女の塾通いが始まると、Aさんはコールセンターでパートをはじめた。パート先には娘の学校の同級生のママがいた。

そのママは子供が中学受験をするので、近所のベーカリーの販売パートから時給がいい事務の派遣社員に転職したという。

「ベーカリーの仕事はお客さんとお天気の話をしたり、売れ残ったパンをもらえたりして楽しかったそうです。でも、今の職場は人間関係が複雑だし、苦情の電話の応対もあってつらい。でも、時給が2倍近いとコールセンターのパートを選択するわけです。コールセンターのパートのほとんどが子供の学費のために働くママです」(Aさん)

もともと中学受験が盛んではなく、Aさん一家同様に中学受験を回避するために、引っ越してきた人たちも多い地区だった。

しかし、小4の2月(塾の新学期)や小5の夏休みなどのタイミングで他の同級生たちも入塾してきた。

「女の子同士の人間関係が難しくなったグループもあるみたいで、そこから抜けるために中学受験をするという子もいました。この地域には偏差値が高くないけれど、面倒見がいい女子校があるので、そういうところに進学するから、小6の2月から入塾してきて、クラスをあげようともしないというスタンスの子もいました」

このように「事情があって地元の公立には進学したくない」という子供は実は多いのだ。

インタビューをしていても「娘はブランド好きなので、名門校に通いたいと望んで」というケースもあるがそれはごく少数派

中学受験をする理由としては「東京だと女子の高校受験の選択肢が少ないから」「うちの息子は内申点がとれるタイプじゃないから」が最も多い

他には

「主張が強い娘なので男子と対立しちゃって」

「小学校のクラスが学級崩壊していて、子供が行きたがらなくなっている」

「治療に何年かかかる病気で、他の子と同じように動けない。公立中学に相談に行ったけれど、ちょっと無理そうかなと判断したので、手厚い私立に入れるしかない」

というように、事情を抱えているケースも多い。

Aさんはこの春から正社員になるという。

「勤務先はパートだけではなく、社員もどんどん辞めていきます。それで私に声がかかったんです」

新卒で損害保険会社に就職し、コールセンターの管理をしていた。その経験を買ってくれたのか、今の職場でパートで働き始めた頃に「ゆくゆくは正社員になってください」と打診されたが「絶対にいやだ」と思っていた。

しかし、夫は「正社員になれるなんてまたとないチャンスだ」と言って、再就職を勧めた。悩んだ末に引き受けた。

「お姉ちゃんが中学受験をすると、妹もやりたいというんですよね。上の子と学校見学に家族で出かけていました。私立の綺麗な校舎を見たら、妹だって、そっちに行きたくなりますよ。差をつけるわけにもいかないので姉と同じ大手塾に通わせています。正社員になると子供の勉強をちゃんと見てあげられないから、個別指導塾を使おうか悩んでいます」

下の子の学年はトラブルもないから、そのまま公立中学に進んでほしかったが、そうもいかなくなってしまった。

長女の学年でいじめっ子が幅をきかせていたことから “重課金コース” に入ってしまったのだ。学区の評判がよくても、学年によっていじめなどの問題は起きうる。

名門校でもトラブルは起きる

もちろん、それは公立小学校だけの問題ではない。名門私立小学校や国立附属でも、いじめなどのトラブルが発生すると、生徒たちが中学受験をして他の中学に進学をする。

ある都内の私立女子校の小学校でいじめが多く、被害者が中学受験をして共学に進学したがるというケースも聞く。その女子校は手厚くて面倒見がいいので知られる。いじめへの対応をしないわけがない。

ただ、学校側がどんなに尽力してもいじめがなくならないのだろう。

なぜそうなるかというと、ひとつには閉鎖的な空間に少数の生徒がいると、人間関係が窮屈になり、いじめが発生しやすくなるからではないか。

公立小学校も少子化でクラスの人数が少なく、学年全体がこぢんまりしているところも増えてきている。そうなるといじめが起きた時に逃げ場がない

コロナ禍で小中学生の不登校の数も増え、2021年には過去最多の24万4940人を数える(文部科学省「問題行動・不登校調査」)。10代の子たちが、学校に通って、楽しい青春を送ることは、ごく普通のことではなくなりつつあるのかもしれない。

そういったことを考えれば、親も学校選びは慎重になる。

結果的に、選択肢の多い中学受験に行き着くのではないだろうか。

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【プロフィール】

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。2022年秋に発行の『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)は受験生の保護者以外も興味が持てる内容と評判の13冊目の単著。

参照:マネーポストWEB 中学受験世帯の3割は年収600万円未満 それでも「公立を避けたい理由」の切実さ

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